陸上特殊無線技士

第3級陸上特殊無線技士 無線工学ポイント集No.1

※3陸特の無線工学のまとめです。この内容を理解吸収すれば国家試験の可能性が見えてくると思います。

第1章 直流回路の問題

1.電気系の素子とその名称

  まず、3陸特の試験に出てくる電気系素子の種類、名称、記号、単位を覚えましょう。

 電池は皆さんご存じの乾電池やバッテリーです。直流の電圧を供給します。
 直流電源はいつも一定の電圧を供給します。
 コンデンサは、電気を貯めることができる素子です。
 コイルは、導線を巻いた構造のもので、電気の流れの変化を妨げるような働きをします。
 抵抗は、電気を消費する機器類です。

               ■■過去問■■
(1)次の電気に関する単位のうち、誤っているのはどれか。
    1.電流[A]  
    2. 静電容量[F]
    3.抵抗[Ω]
    4.インダクタス[Wb]
                              答え:4
  
インダクタンスはコイルの電磁誘導の大きさを表わす定数であり、単位はH:ヘンリー

2.オームの法則

 左の図では、電池V[V]に抵抗R[Ω]をつないでいます。
この回路で、電池の電圧Vを大きくすると、回路に流れる電流は大ききくなります。また、電圧は一定として抵抗Rの値を小さくすると、回路に流れる電流は大きくなります。

 つまり、回路の電流I[A]は、電圧の大きさに比例し、抵抗の大きさに反比例することがわかります。この関係から以下の式が導き出せます。

これオームの法則です。

3.消費電力

 消費電力とは、回路で使用し消費される電力です。電力P=電流I×電圧V[W:ワット]で求まります。前述のオームの法則の式から以下のように変形することができます。

4.抵抗の合成抵抗

 抵抗を直列に接続した場合や、並列に接続した場合の合成抵抗を求める方法です。

(1)直列接続の場合

直列に接続した場合は、単純に合計すれば求まります。
左図のような回路の場合、合成抵抗=R+R

(2)並列接続の場合

並列接続の場合は、以下の式で求めます。

4.コンデンサの静電容量と合成静電容量
 抵抗の合成抵抗を求めたように、コンデンサの静電容量の合成である合成静電容量を求める問題もよく出題されます。

(1)直列接続の場合

コンデンサを直列に接続した場合は、抵抗の並列接続と同じ式で求めます。

(2)並列接続の場合

並列接続の場合は、単純に合計すれば求まります。

0=C+C2

■■過去問■■
(1)図に示す回路の端子ab間の合成静電容量は、幾らになるか。

   
1.11[μF]    2. 22[μF]  3. 33[μF]  4. 44[μF]    

                              答え:1 
     
※積/和で求める。合成静電容量=(22×22)/(22+22)=11[μF]
合成静電容量=同じ大きさのときは、半分になる。


(2)図に示す回路の端子a-b間の合成静電容量は、幾らになるか。


1.15[μF]  2.30[μF]    3.60[μF]   4.90[μF]

                           答え:3
※コンデンサの並列回路の場合は、単純に足せばよい。  

第2章 半導体

1.導体、絶縁体、半導体

   電気を通しやすいか、通さないか等で以下のように分類できます。

シリコンやゲルマニウムは土や木等自然の中に存在する物質です。

 このシリコンやゲルマニウムとヒ素(As)やインジウム(In)等の物資を混合して、電子(マイナス)の多い半導体(N形半導体という)や、プラスの性質をもった正孔の多い半導体(P形半導体)を作り、こららのP形やN形半導体を組み合わせて、ダイオードやトランジスタを作っています。

 注:通常の導体は、温度が上がると電子の動きが活発になるので、抵抗が増えますが、半導体の場合は元から電子の数が少ないので、逆に電子の動きが活発化することにより、抵抗値が低下します。
   (この文書内容は、3陸特の過去問に出題されています)

2.ダイオード

   ダイオードは、下図のようにN形半導体とP形半導体をくっつけたものです。

これをPN接合ダイオードといいます。

下図のようにP形に電池の+、N形にーをつなぐと電流が流れますが、逆につなぐと流れません。

3.トランジスタ

  トランジスタは、このP形、N形半導体を下図のように、N-P-Nのように三段接続したものです。

そして、それぞれの半導体に図のように端子をつけて、
B:ベース、E:エミッタ、C:コレクタと呼びます。
(この各端子名称は過去問に出ています)
左の図はJIS記号です

P-N―Pのように三段接続する方法もあります。

4.電界効果トランジスタ(FET)

下図に接合形FETの概略図を示します。N形半導体の中にP形半導体が形成された構造になっています。

 端子はそれぞれ、
  S:ソース
  D:ドレイン
  G:ゲート     といいます。 

  通常はS⇒Dに電子が流れている(電流は逆方向に流れる)が、ゲートGに加わる逆電圧を変えると、P形半導体周辺の空乏層の大きさが変わるので、S⇒D間に流れる電子を制御することができる。

電界効果トランジスタ(接合型FET)のJIS記号は下図となる。

ソース、ドレイン、ゲートの位置は試験に出るので、覚えておきましょう。

             ■■過去問■■
(1)図に示す電界効果トランジスタ(FET)の図記号において、電極aの名称は
   次のうちどれか。    

   1.ゲート  2.ソース  3.ベース  4. ドレイン        
                            
                            答え:4.ドレイン 

(2)図に示すNPN形トランジスタの図記号において、電極aの名称は、次のうち
   どれか。   

   1.ドレイン  2.ベース  3. エミッタ  4.コレクタ       

                            答え:4.コレクタ

(3)電界効果トランジスタ(FET)の電極と一般の接合形トランジスタの電極の組
  み合わせで、その働きが対応しているのはどれか?      

   1. ドレイン   ベース      
   2. ドレイン   エミッタ      
   3. ゲート   ベース      
   4. ソース   コレクタ              
   
                      答え: 3. ゲート   ベース

第3章 電波と各種アンテナ

(1)電波とは

 高周波電流をアンテナに流すと周りに電界が発生します。するとこの電界により磁界が発生し、さらにその磁界により電界が発生することを繰り返すことにより、電波は伝搬します。
  電波の伝搬速度は光の速さと同じで、3×10m/sです。1秒間に地球を7周半する速度です。

(2)波長とは

 磁石の中で、導線を回転させると、電気が発生します。そしてその電流の大きさは、左図の磁石の中心部に導線が近づくほど大きくなります。
 結果、左図のように電流値が大きくなったり小さくなったりする波になります。(これを正弦波という)

  1秒間に導線が回転する回数を周波数といいます。1回転でちょうど図の周期T[秒]となります。これが1サイクルです。1秒間に1サイクルであれば1[ヘルツ:Hz]といいます。
 導線の回転数が高くなればなるほど、周波数は高くなります。

 そして、この1サイクルの波の長さが波長です。λで表します(ラムダと呼びます)。単位は[m]です。
 周波数が高くなると、1秒間に沢山の波がきますので、1サイクルも短くなり、波長λも短くなります。
アンテナは、電波(特定の高い周波数)に共振するように作られています。そして、電波の周波数の波長λの半分の長さ(λ/2)のときに受信できる電波が最大になるように作られています。

(3)指向性とは

電波は、アンテナから図のように放射されます。棒状のアンテナの場合は前後、両方向に放射されます。
このように電波がどのような形状を描いて伝搬していくのかを表したものを指向性といいます。
 棒状のアンテナの場合ちょうど、8の字を書いたように見えるので、8の字形と言われています。

 また、棒状のアンテナの場合は、左図のように中心点Pから円形に広がって伝搬するので、無指向性(又は全方向性ともいう)といわれています。

(4)水平半波長ダイポールアンテナ

 前述の棒状のアンテナをダイポールアンテナといいます。そしてその長さは、λ/2となっていますので半波長ダイポールアンテナと言います。
 全体でλ/2になればいいので、左図のように長さは、λ/4+λ/4となっています。左図は水平に使用するタイプですが、垂直に使用するものもあります。
 水平半波長ダイポールアンテナの水平面内の指向特性は8の字形です。

(5)ブラウンアンテナ

 ブラウンアンテナは左図のように中心にある放射素子とその周りにある4本の地線から構成されます。
 放射素子の長さはλ/4ですが、4本の地線がちょうど鏡のように働くので、放射素子が地線に鏡のように映って、その長さは、等価的にλ/2となります。
 ブラウンアンテナの放射素子は、垂直に配置されるので垂直偏波で使用され、水平面内の指向性は全方向性(無指向性)です。
  主に、自動車や船舶など移動体のVHF、UHF帯で使用されています。

※垂直偏波とは電波の電界成分が地面に垂直な電波をいいます。水平偏波は、電界成分が地面に水平になって伝搬する電波をいいます。

(6)スリーブアンテナ

 スリーブ(袖)アンテナは、 長さλ/4の導体(アンテナ素子)と、長さλ/4の円筒形スリーブから構成されます。
 利得、指向性などは半波長ダイポールと同じで、スリーブが不平衡電流を阻止するので、図のように同軸ケーブルと直接接続することができます。
 スリーブアンテナの放射素子は、垂直に配置されるので垂直偏波で使用され、水平面内の指向性は全方向性(無指向性)となります。
 スリーブアンテナも主に、自動車や船舶など移動体のVHF、UHF帯で使用されています。

(7)三素子八木・宇田アンテナ

 三素子八木・宇田アンテナは、主にTV用のアンテナや防災無線用として利用されています。
 左図のように送受信機からは放射器に接続されます。
放射器前面には導波器、後方には反射器が設置され、導波器方向に電波が送受信されます(単一指向性)

  

 

               ■■過去問■■
(1)超短波(VHF)帯の周波数を利用する送受信設備において、装置とアンテナ
  を接続する給電線として、通常使用されるものは次のうちどれか。   
    1.LANケーブル(より対線) 
    2.導波管  
    3.同軸給電線  
    4.平行2線式給電線    
                        答え:3同軸給電線
 ※VHF帯では同時期ケーブルが使われる。導波管はもっと周波数の高いマイクロ波
  (3~30GHz)帯で使用される。

(2)次の記述の(  )内に入れるべき字句の組合せで正しいのはどれか。
 
  
 「図のアンテナは、( A )アンテナと呼ばれる。電波の波長を λで表したとき、
 アンテナ素子の長さℓは( B )であり、水平面内の指向性は全方向性(無指向性)
 である。                   

     A        B
  1  ダイポール    1/2波長         
  2  ブラウン      1/4波長        
  3  ダイポール    1/4波長
  4  ブラウン      1/2波長
                             答え:2

(3)図に示す水平半波長ダイポールアンテナのℓの長さと、水平面内の指向特性の組合
   せで、正しいのはどれか。

                                                   
     ℓの長さ        指向特性
  1  1/4波長       全方向性(無指向性
  2  1/4波長       8字形         
  3  1/2波長       全方向性(無指向性)
  4  1/2波長       8字形           
                             答え:2  

(4)図に示すアンテナの名称とℓの長さの組合せで、正しいのはどれか。


      名称         ℓの長さ
  1  スリーブアンテナ     1/4波長
  2  スリーブアンテナ     1/2波長
  3  ホイップアンテナ     1/4波長
  4  ホイップアンテナ     1/2波長  
                              答え:1  

(5)図は、三素子八木・宇田アンテナ(八木アンテナ)の構成を示したものである。
各素子の名称の組み合わせで、正しいのはどれか。
ただし、A、B、Cの長さは、A<B<Cの関係があるものとする。



      A              B    C
  1. 反射器  導波器  放射器
  2.反射器  放射器  導波器
  3.導波器  反射器  放射器
  4.導波器  放射器  反射器             答え:4

 

  

ABOUT ME
東京でんき塾
講師経歴:NTTを退職後、法政大学理工学部で電気主任技術者系の発電機、電動機、高圧装置などの実験を担当。現在はフリーの講師等として活動中です。 所有資格:電気通信主任技術者、電気通信工事担任者(総合種)、第1級陸上無線技術士、電気主任技術者、ネオン工事技術者、電気工事士など多数。